テフロン無電解ニッケルメッキ

テフロン無電解ニッケルメッキは、無電解ニッケル処理液の中にテフロン微粒子(PTFE)を均一に分散させ、無電解ニッケルメッキとともに共析させ、皮膜を生成する処理のことです。無電解ニッケルメッキによって得られる効果に加え、摺動性離型性耐摩耗性の向上が期待できる三和メッキ工業オリジナルの技術です。

テフロン無電解ニッケルメッキとは

テフロン無電解ニッケルメッキは、無電解ニッケルメッキを行う際に使用するメッキ液にテフロン微粒子(PTFE)を加えることで、ニッケルと共析させていくメッキの方法です。無電解ニッケルメッキのメッキ皮膜には、リンが含有していますが、そこにテフロンが加わることで、皮膜が摩耗しても摺動性が劣らないという特徴が得られます。

テフロン無電解ニッケルメッキの原理

もともと無電解ニッケルの原理は、

硫酸ニッケルおよび次亜リン酸ナトリウムpH緩衝材錯化剤安定化剤等で構成されるメッキ液に対象物を浸し、液中での還元反応を利用することで対象物表面にリンを含んだ金属皮膜を析出させる

というものでした。この無電解ニッケルメッキを行う際に、同じ液中にテフロン微粒子(PTFE)を分散させてか無電解メッキしていくため、テフロンを含んだニッケルリンの皮膜が析出されるという原理になっています。

テフロン無電解ニッケルメッキ

テフロン無電解ニッケルメッキの特徴

テフロン無電解ニッケルメッキの特徴には、次のようなものがあります。

テフロン無電解ニッケルメッキの特徴は、無電解ニッケルメッキによって得られる特徴に加え、摺動性や潤滑性などが加わります。また、接触角が大きくなることで撥水性も向上します。

テフロン無電解ニッケルメッキのメリット

テフロン無電解ニッケルメッキのメリットは次の7つです。

かじりや焼き付け防止になる
かじりや焼き付きというのは、ネジやナット等が摩擦熱によって膨張し動かなくなってしまう状態をいいますが、テフロン無電解ニッケルメッキを行うことによって摺動性や潤滑性が向上するため、かじりや焼き付けが起こるのを防ぐことができます。
皮膜が摩耗しても摺動性が劣らない
もともと無電解ニッケルメッキには高い摺動性はありませんが、テフロン微粒子(PITFE)と共析しているため、高い摺動性を得ることができます。皮膜が少々摩耗してしまっても、摺動性が劣らないのは、テフロン無電解ニッケルメッキならではの特徴といえます。
複雑な形状でもメッキが均一
テフロン無電解ニッケルメッキは、無電解ニッケルメッキの液中にテフロン微粒子(PTFE)を均一に分散させうことで行うため、無電解ニッケルメッキと同様、均一な皮膜を生成することができます。そのため、複雑な形状の部品や小さな部品であっても綺麗にメッキが析出します。
ピンホールが少ない
無電解ニッケルメッキと同様、メッキ断面は層状構造になります。従って、ピンホールが少なくなります。
耐食性が高い
テフロン無電解ニッケルメッキは耐食性が高いため、メッキすることで本来の素材の腐食を防ぐことができます。
耐薬品性がある
テフロン無電解ニッケルメッキは、無電解ニッケルメッキと同様耐薬品性に優れているため、さまざまな分野で活用できます。しかし、耐薬品性に関しては含まれるリンの含有量によって異なるため、注意が必要です。
さまざまな金属にメッキ可能
無電解ニッケルメッキと同様さまざまな種類の金属にメッキすることができます。具体的には、アルミニウムステンレス真鍮にも処理が可能です。

テフロン無電解ニッケルメッキのデメリット

一方、テフロン無電解ニッケルメッキのデメリットは次の3つです。

高温になるため、製品によっては処理が難しい
テフロン無電解ニッケルメッキの場合は、処理温度が高温になるため製品によっては処理そのものが難しい場合があります。
コストがかかる
無電解ニッケルメッキと同様、材料費が高くメッキの析出スピードも遅いため、その分仕上がりまでに時間かかりコストが高くなってしまいます。
電気メッキよりも管理が難しい
電気メッキと比べると、浴組成の変動が大きいため管理が難しいという欠点があります。

テフロン無電解ニッケルメッキの工程

一般的なテフロン無電解ニッケルメッキの工程を紹介します。

テフロン無電解ニッケルメッキ工程

不導体へのテフロン無電解ニッケルメッキの工程は次のような工程になります。

テフロン無電解ニッケルメッキ工程(不導体)

  • テフロン無電解ニッケルメッキ

テフロン無電解ニッケルメッキの皮膜特性

テフロン無電解ニッケルメッキの拡大画像

組成 ニッケル 83〜90wt%
リン 7〜8wt%
テフロン 33%wt
結晶構造 非晶質
硬度 Hv200~250
面粗さ Ra:0~6.0、Rz:0~21
静摩擦係数 0.13µ
動摩擦係数 0.12µ
接触角 110°
密度 6.6g/㎤

テフロン無電解ニッケルメッキの耐薬品データ

基本的に金属ニッケルは、塩酸硫酸硝酸に溶けます。
下記にて他の試薬に関する耐薬品性を記載します。

試薬 温度(℃) 腐食率(㎛/年)
アセトアルデヒド 65.6 0.5
アセトン 室温 0.076
アクリロニトリル 65.6 0.4
硫化アンモニウム 48.9 3.8
酢酸イソペンチル 室温 0.048
塩化イソペンチル 室温 0.33
ビール 7.2 0.2
ベンゼン 室温 0.04
酢酸ベンジル 室温 0
ベンジンアルコール 室温 0.092
48.5%塩化カルシウム 室温 0.5
カプロラクタム 85 0.76
カプリル酸 65.6 1.52
硫化炭素 室温 0
四塩化炭素 室温 0
5%洗剤 室温 0.94
エチルアルコール 室温 0.16
エチルグリコール 室温 0.64
37%ホルムアルデヒド 室温 0.34
ガソリン 室温 0.56
80%乳酸 室温 3.7
メチルアルコール 室温 0
ナフサ 室温 0
ナフタル酸 65.6 0.5
オレイン酸 室温 0.3
オレンジジュース 室温 0.33
テトラクロロエチエン 65.6 3.8
石油 室温 0
ポリ酢酸ビニル 98.9 1.27
ロジン 室温 0
10%炭酸ナトリウム 室温 0
3%塩化ナトリウム 室温 1
50%水酸化ナトリウム 121.1 0
ソルビトール 65.6 2.5
ステアリン酸 70 0.5
砂糖水 室温 0
蒸留水 室温 0.74
25%尿素溶液 室温 0

テフロン無電解ニッケルメッキの用途

テフロン無電解ニッケルメッキの用途は、主に摺動性が求められるような金型部品や自動車部品の他、光学系部品やギア、カム部品などに適しています。

テフロン無電解ニッケルメッキの事例

  • テフロン無電解ニッケルメッキ事例
    【事例1】
    半導体搬送装置用のシュート部品
    滑り性を付与
  • テフロン無電解ニッケルメッキ事例
    【事例2】
    自動車部品に滑り性と耐摩耗性を付与
  • テフロン無電解ニッケルメッキ事例
    【事例3】
    金型部品に摺動性を付与

その他のメッキの呼び方

PTFE Nip、無電解ニッケルテフロン、テフロンメッキ、二ムフロン、カニフロン

JIS(専門用語)

754 耐摩耗性 2003 錯化剤
8018 ピンホール 147 腐食

英語表記

メッキ plating
無電解ニッケル electroless nickel
テフロン Teflon
摺動性 Sliding property
離型性 Releasability
耐摩耗性 Wear resistance
ニッケル nickel
リン Rin
硫酸ニッケル nickel sulfate
次亜リン酸ナトリウム sodium hypophosphite
pH緩衝材 pH buffer
錯化剤 complexing agent
安定化剤 stabilizer
還元反応 reduction reaction
潤滑性 lubricity
接触角 contact angle
撥水性 water repellency
かじり Biting
析出 Precipitation

テフロン無電解ニッケルメッキのまとめ

無電解ニッケルメッキのメッキ液中にテフロン(PTFE )を均等に分散させることで共析させるテフロン無電解ニッケルメッキは、他社にはない三和メッキ工業株式会社オリジナル技術となります。析出されるメッキ皮膜は、緻密で精度がよく、滑り性や摺動性が高いため滑り性や摺動性を求める部品には最適なメッキ処理です。

この記事の解説者

代表取締役社長 清水栄次

三和メッキ工業株式会社
代表取締役社長 清水栄次

全国めっき技術コンクールにおいて厚生労働大臣賞、金賞など数多く受賞。めっき業界において始めてIS09001,14001,27001を独自で構築。その中から、めっき特許、並びに独自の技術を商標化。インターネットにて380001以上の取引実績。
めっきセカンドオピニオンによる他社のめっき不良を年間100件解決。

  • 2014年 神戸大学大学院経営学研究科 非常勤講師
  • 2020年 三重大学 非常勤講師

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