不動態化処理(パシペート処理)

錆びることがないイメージがあるステンレスですが容易に錆びてしまいます。
錆びないようにする方法として、めっきすることも選択肢の1つですが、最適な防錆処理である不動態化処理(パシペート処理)について解説をします。

不動態化処理(パシペート処理)とは?

不動態化処理(パシペート処理)をする目的としては、ステンレスに含まれるクロム酸素が結合し塩素イオンが発生することで、不動態化皮膜が出来てしまいます。

この皮膜により、局所的にステンレス素材が破壊され、脱落、酸化を繰り返し、錆びが発生いたします。この化学反応性を人工的に無くすことにより、耐食性、剥離性を向上させることのが不動態化処理(パシペート処理)なのです。

不動態化皮膜

不動態とは?

金属表面の腐食作用に抵抗する酸化皮膜ができ、内部の金属を酸や溶液にさらされても溶解しないように保護する状態のことです。

不動態皮膜とは?

表面の金属分が酸素と結合することよって出来る緻密な皮膜のことで、腐食(錆び)からの保護作用がある皮膜のことです。

皮膜は溶液や酸にさらされても溶け出すことが無いため、内部の金属を腐食から保護するために用いられます。

不動態化処理(パシペート処理)の特徴は?

不動態化処理(パシペート処理)の特徴は

  1. 皮膜が1nmと薄い
  2. ステンレスの耐食性を更に向上させることが出来る
  3. 塩素の雰囲気に弱いので海水やプールの中では錆びてしまう
  4. もらい錆の影響を受けやすい

不動態処理の方法

不動態皮膜を作るために2つの方法があります。

硝酸浸漬法

20〜30%の硝酸に浸漬する。
表面のクロム濃度が高まり、耐食性や耐酸性が向上します。

電解研磨法

電気分解の原理を利用する電解研磨法にて金属の表面を溶かしステンレス表面の微細な傷や汚れを除去し表面を滑らかにさせることで均一な不動態皮膜の形成がしやすく耐食性が向上します。

不動態化処理(パシペート処理)の工程とは?

不動態化処理(パシペート処理)の工程

不動態化処理(パシペート処理)の工程

不動態化処理(パシペート処理)は、他の金属でも対応可能

表面の金属部分が酸素と結合することによって出来る緻密な皮膜のことであり、腐食からの保護作用あるので、鉄、アルミニウムチタンにも不動態化処理(パシペート処理)をすることが出来ます。

鉄の場合

電気亜鉛めっき後のクロメート処理

アルミニウムの場合

アルマイトアロジン処理

チタンの場合

陽極酸化処理

用途と事例

  • 航空分野

    事例:航空分野航空分野
    機体の装備品のSUS316への耐食性向上

  • タンクローリー

    事例:タンクローリー
    SUS430のタンク装備品の耐食性向上

  • 精密機械

    事例:精密機械
    SUS410の精度必要な部品への耐食性向上

不動態化処理(パシペート処理)に関連する英語表記

不動態化処理(パシペート処理) Passivation treatment
不動態 Passivation
不動態皮膜 Passivation film

不動態化処理(パシペート処理)に関連する「JIS(専門)用語」

1069 不動態 1070 不動態化

処理が必要な代表的な

不動態化処理(パシペート処理)が必要な代表的な金属にステンレスがあります。
ステンレスは鉄を50%以上としクロムを10.5%以上含んでいるために錆びにくいです。
クロムは鉄よりも酸素に結び付きやすい特性から、鉄が酸化するよりも先にクロムが酸化し、酸化皮膜となって表面を覆い傷がついても直ぐに再生するこの膜のおかげで、錆の発生を防ぎます。

表面に酸化皮膜が自然に形成されることにより素材まで酸化が及ばないことがステンレスを錆びにくい理由です。

ステンレスには種類がある

1.マルテンサイト系

マルテンサイト系は、SUS403、SUS410のことで磁性があり焼入れで硬化し炭化クロム窒化クロムに変化するので酸化皮膜が十分出来ず、腐食する。

2.フェライト系

フェライト系は、SUS430のことで磁性があり熱処理でも硬化せず、マルテンサイト系よりも耐食性は良い。

3.オーステナイト系

オーステナイト系は、SUS316、SUS304のことで磁性がなく熱処理でもの硬化せず、高い耐食性がある。

この特性から考えると、マルテンサイト系には、不働態化処理は必要であり、高い耐食性を求めるのであれば、オーステナイト系にも不働態化処理をするのがお勧めです。

【不動態化処理(パシペート処理)のまとめ】

ステンレスいう金属は錆びに強く錆びないというイメージが強いです。
しかし、もらい錆びや塩水の雰囲気には弱いので不動態化処理(パシペート処理)を行い、薄膜で耐食性の強いステンレスを作ることが大事だということが解ります。

また、ステンレスにも色々な種類があり不動態化処理(パシペート処理)をしても耐食性が上がらない場合があるので材料の面からも検討する必要があります。

下記は、各種ステンレス材の耐食性を比較した画像です。

各種ステンレス材の耐食性を比較した画像

不動態化処理(パシペート処理)についてのご質問、お困りごとのご相談は随時無料で受け付けています。
お問合せフォームまたはチャット、電話などでお待ちしております。

この記事の解説者

代表取締役社長 清水栄次

三和メッキ工業株式会社
代表取締役社長 清水栄次

全国めっき技術コンクールにおいて厚生労働大臣賞、金賞など数多く受賞。めっき業界において始めてIS09001,14001,27001を独自で構築。その中から、めっき特許、並びに独自の技術を商標化。インターネットにて380001以上の取引実績。
めっきセカンドオピニオンによる他社のめっき不良を年間100件解決。

  • 2014年 神戸大学大学院経営学研究科 非常勤講師
  • 2020年 三重大学 非常勤講師

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