メッキをする場合に、欠かすことの出来ない存在である亜鉛メッキ。
亜鉛皮膜は、光沢を有し、反磁性を示す青味を帯びた銀白色の金属であり、素材に見合った亜鉛メッキを選択するかどうかで、耐食性が左右される場合があります。
ここでは、どのような場面で亜鉛メッキの種類を選択するのかを解説します。
目次
亜鉛メッキには電気亜鉛メッキと溶融亜鉛メッキの2種類があります。電気の力でメッキする方法が電気亜鉛メッキ、亜鉛を高温で溶解しメッキ処理する方法が溶融亜鉛メッキといわれています。
電気亜鉛メッキは、電流が鉄から亜鉛に向かい亜鉛が液中で陽極となって溶解するので、鉄の錆を防ぐ効果があります。
素材に電気を使用してメッキする方法は、均一で精度のよい薄い亜鉛皮膜を析出することが出来るので、精度を要求される素材に適しています。
しかしそのままでは、亜鉛メッキ皮膜が酸化し腐食してしまうので、クロメート処理を行い耐食性を向上させなければなりません。
【電気亜鉛メッキの原理】
処理方法はラック(ジグ)に1個ずつ製品を固定し処理をする場合が多いので、キズを付けずに処理出来ます。
電気亜鉛メッキの特徴は9つあり、様々な特性を付与することが可能です。
亜鉛メッキは鋭い角部にはメッキが厚くつきバリが出やすくなります。隅部や複雑なには、メッキがつきにくいです。角部にRをつけられるものは出来るだけ大きくとり、隅部(特に形状部ツバのついた軸の根元等)には、できれば逃げのあることが望ましいです。複雑な形状の場合には治具の製作が必要となります。
電気亜鉛メッキ浴には、アルカリ性浴としてシアン化物浴およびシアン物を含まないジンケート浴、酸性浴として塩化亜鉛メッキ浴があります。
シアン化亜鉛メッキは、優れた皮膜特性やウイスカが出にくいという長所がありますが、シアン化合物を使用しますので毒性が問題になり、シアン化合物を含まないジンケート浴や塩化亜鉛浴が用いられるようになってきました。[3]
【亜鉛メッキ浴の種類と特性の表】
シアン化物浴 | ジンケート浴 | 酸性浴 | |
---|---|---|---|
硬さ(Hv) | 60~80 | 90~120 | 70~90 |
均⼀電着性 | ◎ | ◎ | ◎ |
低⽔素脆性性 | × | × | ◎ |
鋳物へのメッキ | × | × | ◎ |
プレス物へのメッキ | ◎ | ◎ | ◎ |
ビス、ボルトへのメッキ | ◎ | ◎ | ◎ |
クロメートの密着性 | ◎ | ◎ | ○ |
◎:良好 ○:普通 ×:悪い
電気亜鉛メッキが完成するまでの一般的な工程を図でまとめました。
電気亜鉛メッキにて析出した亜鉛皮膜は、そのままの状態では白錆が発生するので腐食してしまいます。そこで腐食しないよう開発されたのが、六価のクロム酸を主成分とする処理液で表面処理するクロメート処理という方法です。
クロメート処理は4種類に分かれており、JIS規格(H8625)にて等級・種類及び記号および膜厚が規定されています。
色調による名称 | 特徴 | 塩水噴霧試験 白錆発生時間 |
---|---|---|
光沢クロメート | 薄い青色光沢外観。 6価クロム含有が少ないの耐食性は良くない |
24~72時間 |
有色クロメート | 黄色から赤色の外観。色の濃い程、 6価クロム含有率が高く、耐食性が良い |
96~150時間 |
黒色クロメート | クロメート液中に銀塩を含む。 反応によりAg2Oを生じて黒色に発色する。 乾燥シミが出やすいので手早く乾燥する |
96~150時間 |
450℃程度の溶解した亜鉛メッキ槽に製品を浸漬し冷却する方法で、電気メッキのように膜厚調整が困難ですが、全体的なメッキができます。
製品の影になる部品へのメッキ処理が可能なので、大きな製品に向いていますが、素材に反りが発生するため精密部品への処理は向いていません。
溶融亜鉛メッキが完成するまでの一般的な工程を図でまとめました。
大型の部品や形状が複雑なものでも亜鉛皮膜が析出する溶融亜鉛メッキには、次のような特性があります。
メッキの等級は以下の表の通りとし、メッキ最小厚さによって6等級に分ける。
メッキ記号は、JIS H 0404による。
等級 | メッキ最小厚さ |
---|---|
1級 | 2µm |
2級 | 5µm |
3級 | 8μm |
4級 | 12µm |
5級 | 20µm |
6級 | 25µm |
使用環境、使用環境条件は、JIS H 0404による。
使用環境 | 使用環境条件 | 記号 | 例 |
---|---|---|---|
D | 通常の屋内環境 | D | 住宅、事務所など |
C | 湿度の高い屋内環境 | C | 浴室、厨房など |
B | 通常の屋外環境 | B | 田園、住宅地域など |
A | 腐食性の強い屋外環境 | A | 海浜、工業地域など |
【メッキ記号および呼び方】
Ep-Fe/Zn10・・・鉄素地上、電気亜鉛メッキ10μm
Ep-Fe/Zn〔2〕・・・鉄素地上、電気亜鉛メッキ2級(5μm以上)
1003 化成処理 | 1084 犠牲防食 |
1014 酸化 | 5006 クロメート処理 |
2023 引っ掛け,ジグ,ラック |
亜鉛 | zinc |
---|---|
亜鉛メッキ | zinc plating |
電気亜鉛メッキ | electro zinc plating |
溶融亜鉛メッキ | Hot dip galvanizing |
犠牲防食 | barrel processing |
クロメート皮膜 | chromate conversion coating |
クロメート処理 | chromating |
光沢クロメート | coloured chromate conversion coatings |
ユニクロ | Unichrome |
有色クロメート | coloured chromate conversion coatings |
黒色クロメート | black chromate conversion coating |
三価クロメート | bright chromate(as CrO3) |
脱脂 | degreasing |
酸洗い | deoxidizing,pickling |
ラック | platig rack |
ジグ | jig |
バレルメッキ法 | barrel processing |
RoHS指令 | Restriction of Hazardous Substances |
亜鉛メッキの特徴を活かすためにも、精密な部品へ耐食性を求める場合には電気亜鉛メッキを選択、大型部品で屋外にて高耐食性を求める場合には溶融亜鉛メッキを選択することを推奨しております。
素材や使用環境において適切な亜鉛メッキを選択すれば、お客様満足度もきっと向上することでしょう。
亜鉛メッキについてのご質問、お困りごとのご相談は随時無料で受け付けています。お問合せフォームまたはチャット、電話などでお待ちしております。
クリックするとPDFファイルが開きます。
脚注