メッキ加工とは電気の力や置換反応を利用して行う表面処理技術のことで、金属や非金属の樹脂などの素材表面に薄い金属皮膜をつけ、防食性や強度、外観性、機能性をもたせることができます。メッキ加工の歴史は古く、現在はさまざまな種類のメッキ加工が存在します。この記事では、メッキ加工の種類やそれぞれの特徴について紹介します。
目次
メッキ加工とは表面処理の一種で、水溶液中で電気の力や置換反応を利用して、金属、非金属の樹脂といった素材の表面に薄い金属皮膜をつけることで防食性や強度、外観性、機能性をもたせる技術のことをいいます。
メッキ加工の種類はいくつもありますが、湿式メッキと乾式メッキの2つに大別できます。湿式メッキは、薬液(メッキ液)を使って化学反応で皮膜を生成するメッキのことで、乾式メッキは薬液(メッキ液)を使わずに物理的な方法で皮膜を生成するメッキです。この2種類以外には、陽極酸化処理、化成処理などもあります。[1]
メッキ加工の歴史は古く、古代文明の時代から利用されています。約3500年前である紀元前16世紀に北部メソポタミア(現在のイラク)で鉄器などに錫(すず)メッキが行われました。日本では、752年の奈良の大仏建立の際に、水銀に金を混ぜ合わせた合金(金アマルガム)が表面に塗布されています。[2]
メッキ加工では、素材本来の性質に新たな性質を付加することによって、次のような特徴を素材に加えることができます。
湿式メッキは薬液(メッキ液)を使って化学反応で皮膜を生成するメッキの総称で、メッキ方法として電気メッキと無電解メッキの2つがあります。
電気メッキとは、電気分解(電解)の応用で、メッキ液中の金属イオンを電気を使って還元することにより、金属皮膜を生成させる技術のことをいいます。
電気メッキを行う種類としては、次のものがあります。
電気メッキの原理は、金属イオンが存在する電解質水溶液に、陰極(メッキしたい素材)と陽極の2つの電極に電気を流し、陰極において還元反応を生じさせます。
電気メッキが発明されたのは、1805年です。それまでの長い間、メッキ技術はアマルガム法か無電解メッキ法しかありませんでした。しかし電気メッキの発明以降は、次々と開発が進み、さまざまなメッキが誕生するようになりました。
亜鉛メッキとは、鉄素地を亜鉛メッキ浴に浸漬して電解することによって亜鉛皮膜を生成する方法です。亜鉛メッキ上に不動態膜が生成されることで、防錆効果が高くなる性質があるため、主に鉄鋼に使われています。メッキをしただけでは、亜鉛メッキ皮膜が酸化し腐食してしまうため、クロメート処理を施して鉄素地の耐食性を向上させる必要があります。
亜鉛メッキの特徴は次の通りです。
亜鉛メッキの工程は次の通りです。
ニッケルメッキとは、金属素地をニッケルメッキ浴に浸漬し電解することによってニッケル皮膜を生成させるメッキのことをいいます。錆びにくく、鉄に近い性質を持っていますが、空気中の湿気に対しては鉄よりも安定していることから、装飾、防食の両面に利用されています。
ニッケルメッキの特徴は次の通りです。
ニッケルメッキの工程は次の通りです。
クロムメッキとは、金属素地の下地にニッケルメッキを行い、クロムメッキ浴に浸漬し電解することによってクロム皮膜を生成させるメッキのことをいいます。
クロムメッキを大別すると「装飾クロムメッキ」「硬質クロムメッキ」の2つがあります。この2つは同じクロムメッキと呼ばれるものですが、膜厚によって区別され、一般的にクロムメッキと呼ぶ場合は「装飾クロムメッキ」を指します。
装飾クロムメッキの特徴は次の通りです。
クロムメッキの工程は次の通りです。
硬質クロムメッキは金属素地にダイレクトに電解してクロム皮膜を1µm以上生成させるメッキのことをいいます。硬質クロムメッキは厚いメッキを施すことにより、硬度と耐摩耗性が良くなるため、機械部品や金型など工業製品によく使われています。
硬質クロムメッキの特徴は次の通りです。
硬質クロムメッキの工程は次の通りです。
金メッキとは、金属素地を金メッキ液浴に浸漬し電解することで、金皮膜を生成させるメッキのことをいいます。
金は外観が美しい点を持つ以外にも、電気や熱をよく伝える性質やはんだづけ性にも優れています。
金メッキの特徴は次の通りです。
金メッキの工程は次の通りです。
銅メッキとは、各種メッキ処理の下地メッキで、銅メッキ液浴に浸漬し電解することで銅皮膜を生成させるメッキのことをいいます。
金属としての銅は、電気伝導性と熱伝導性、延性に優れています。
銅メッキの特徴は次の通りです。
銅メッキの工程は次の通りです。
無電解メッキとは、電気を用いることなく、溶液中の金属イオンが還元剤の働きで電子を受け取って還元析出するメッキのことをいいます。均一にメッキがつくため形状が複雑でもメッキがつきやすいのが特徴です。
金属のイオン化傾向を利用した置換反応により、溶液中で電位の卑な金属上に電位の貴な金属を析出させます。
1835年にドイツで開発されたガラス面に銀を析出させる銀鏡反応が、無電解メッキの最初とされています。
無電解ニッケルメッキとは、電気を流さずメッキ浴中で化学的還元反応を利用してリンとニッケルを析出させるメッキ処理のことをいいます。無電解ニッケルメッキで使われるメッキ液には、還元剤として次亜リン酸ナトリウムが使用されることから、析出する皮膜にはリンが含まれます。そのため無電解ニッケルメッキには、一般的なニッケルメッキとは異なるさまざまな特性があります。
無電解ニッケルメッキの特徴は、次の通りです。
無電解ニッケルメッキの工程は次の通りです。
置換メッキとは、金属塩水溶液中で置換反応によって金属皮膜をつけるメッキのことをいいます。
外部からの電気エネルギーの供給や還元剤の働きなしに、金属のイオン化傾向を利用した置換反応により、溶液中で電位の卑な金属上に電位の貴な金属を析出させます。
置換メッキでは、素材の表面が完全にメッキされてしまうと、電子の供給ができなくなり、メッキができなくなるため、得られるメッキの厚さには限界があります。
そのため、皮膜が薄く耐食性は高いが、密着性が悪いという特徴を持ちます。
溶融メッキとは、融点の高い金属素地を、融点の低い被覆金属を溶解させた液中に浸漬して表面に融着、浸透させるメッキのことをいいます。
高温度で溶融している金属の中に製品を浸漬して引き上げ、製品の表面に溶融金属の皮膜を形成させます。
1742年フランスの科学者P.J. Malouinが発明したと言われています。
溶融亜鉛メッキとは、450℃程度の溶解した亜鉛メッキ槽に製品を浸漬し冷却するメッキのことをいいます。
製品の影になる部品へのメッキ処理が可能なため、大きな製品に向いていますが、素材に反りが発生するため精密部品への処理は向いていません。
溶融亜鉛メッキの特徴は次のようなものがあります。
乾式メッキとは、真空中でメッキする方法で真空容器内を真空ポンプで高真空にして、金属を高温で蒸気にし、素材を被覆するメッキのことをいいます。
真空蒸着とは、気体中もしくは真空中にて材料表面に金属膜を生成する技術です。真空中で金属を加熱すると、金属が蒸発します。その蒸発分子を、蒸気温度より低温の基材に付着させると、表面で蒸気が凝縮し、薄膜を形成します。この薄膜はきわめて薄く、通常0.05〜0.1μm程度です。表面の光沢は、基材の粗さや蒸着時の雰囲気で異なります。
容器内を金属蒸気で満たし、あらかじめ樹脂コーティング(塗装)した被処理物を金属で被覆する技術で単純に金属の気体分子を作って、被処理物に付着させます。
1857年に電気分野のマイケル・ファラデー(ファラデーの法則)が最初に行ったと言われています。
真空蒸着の特徴は、次の通りです。
スパッタリングとは、成膜したい金属をイオン化した不活性ガスで、はじき飛ばして被処理物に付着させるメッキのことをいいます。
物質にイオン等を高速で衝突させることにより、分子が叩き出される現象を利用します。
1950年代後半に、ドイツにおいて耐摩耗材としての炭化チタン膜が作製されたとされています。
スパッタリングの特徴は、次の通りです。
イオンプレーティングとは、真空容器中に蒸発した金属粒子の一部をイオン化して薄膜を形成させるメッキのことをいいます。
蒸発粒子をプラズマ中を通過させることで、プラスの電荷を帯びさせ、基板にマイナスの電荷を印加して蒸発粒子を引き付けて堆積させ膜を作成します。樹枝状結晶などの生成はイオンの衝撃で妨げられ、等方的な結晶組織になり、膜の密着度が高く、化合物皮膜も得られます。
宇宙開発技術の一環として、アメリカで発明された技術です。
イオンプレーティングの特徴は、次の通りです。
化学気相メッキ(CVD法)とは、常圧あるいは減圧下でハロゲン化金属などのガスを加熱した素材面で分解または置換、あるいは水素を送って還元させてメッキ皮膜を得るメッキのことをいいます。
成膜したい元素を含む気体を基板表面に送り、化学反応、分解を通して成膜させます。
化学気相メッキ(CVD法)の特徴は、次の通りです。
陽極酸化処理とは、電解溶液中で金属を陽極として通電させることで、表層に酸化皮膜を成長させる処理のことをいいます。
金属表面を陽極(+)で電解処理して酸化皮膜を人工的に作ります。
アルマイト処理とは、アルミニウム表面の陽極酸化皮膜を作る処理で、人工的にアルミニウム表面に厚い酸化アルミニウム皮膜を作ることにより耐食性・耐摩耗性の向上、美観性やその他の機能を付与する処理のことをいいます。
電解質溶液中にアルミニウムを浸し、アルミニウムを陽極(正極)として通電させることにより、酸化されて陽イオンとなり、溶液中に溶解し発生した酸素と化合して酸化アルミニウムの被膜が生成されます。
1929年に理化学研究所にて発明されました。
アルマイト処理の特徴は次のようなものがあります。
アルマイト処理の工程は次の通りです。
化成処理とは表面処理の形式のひとつで、素材、特に金属の表面に処理剤を作用させて化学反応を起こさせる処理のことをいいます。
黒染メッキとは、鉄の表面の化学変化をアルカリ処理することで黒錆と呼ばれる四三化鉄の酸化皮膜を作る処理です。
黒染メッキの特徴は、次のようなものがあります。
黒染メッキ(処理)の工程は次の通りです。
リューブライト処理とは、リン酸マンガン皮膜処理のことであり、黒色の皮膜でリン酸塩処理としてマンガン皮膜を析出させる処理のことをいいます。
リューブライト処理には次のようなものがあります。
リューブライト処理の工程は次の通りです。
ご依頼時にお伺いしたいのは材質です。
メッキ加工が出来るかどうかは材質で決まります。
次にどのようなメッキ加工を処理したいのかをお教え頂くことになります。
プラスチックへのメッキ加工は非常に難しく一般的な方法では処理することが出来ません。
対応出来たとしても専用のメッキ加工前処理設備等が必要になります。
当社の場合、ゴールドのメッキ加工は金メッキにあたります。
24Kメッキを処理をしますが素材や大きさに制限があります。
金メッキは軟質ですので傷がつきやすいというデメリットがあります。
お問合せで一番多いのが、メッキ加工料金ついてです。
適正な料金をお知らせするのには、材質等を見極める必要があります。
当社で対応出来ないメッキ加工は他社をご紹介させて頂く場合があります。
上記の内容をお教え頂ければ詳細のお見積をご提案させて頂きます。
当社の場合、はがきサイズの製品に亜鉛メッキをした場合、¥1,000円からになります。
アクセサリーのメッキ加工は現在のメッキ加工と材質を明確にして頂く必要があります。
お解りになられない場合には、当社にアクセサリーをお送り頂き判断させて頂きます。
メッキ製品は、身近な生活用品やアクセサリー、自動車や航空機など、日常のあらゆるところで使われています。メッキ加工は、素材に金属をつけることにより、外観性の向上や錆びないようにすること、硬度などの機能特性を付与し、あらゆる産業界で利用されている技術です。
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脚注