着色アルマイト処理(カラーアルマイト)

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)は、アルマイト処理後に表面にできる孔(ポア)に染料を吸着させることで着色する処理のことです。カラーバリエーションが豊富にできるため、意匠性などを高めることが可能です。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)とは

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)は、通常のアルマイト処理を行った後の酸化皮膜表面にできる孔(ポア)に染料を吸着させることで着色していく方法です。着色を行う際、染料の濃度や温度、染色時間などによって染料の吸着量が異なります。この吸着量の違いを活かすことで、染料の濃淡に変化が生じ、カラーバリエーションが増えることになります。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の原理は?

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の原理は、次の図のようなイメージです。
通常のアルマイト処理によって表面に酸化皮膜が生成され、セルと呼ばれる立体構造の皮膜が形成されます。この時、アルマイト処理の生成した酸化皮膜には、直径10~20nmの孔が発生しますが、着色アルマイト処理(カラーアルマイト)では、この孔(ポア)に染料を浸透させ、吸着させてから封孔処理を行っていきます。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の原理

アルマイト処理の皮膜構造は、以下のようなハニカム構造です。

ハニカム構造

着色アルマイトの原理

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の特徴

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の特徴には、次のようなものがあります。

  • アルマイト処理後に着色できる
  • 放熱性を上げられる
  • 光の反射を防止できる

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)では、着色できるという点が一番の特徴です。着色が可能になることによって素材に意匠性をもたらすことができるため、工業用だけでなく商業用の製品づくりにも適しています。例えば、照明機器やアウトドア用品など、身近なところにも着色アルマイト処理(カラーアルマイト)が使われています。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)のメリット

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)のメリットは次の3つです。

・外観性(美観性)を高められる。
アルマイト処理によってできた微細なポア(孔)に染料を吸着させるため、素材に外観性(美観性)を持たせることが可能です。
・均一な皮膜でカラー色を実現できる
塗装などとは違い、皮膜そのものにしっかりと染料を吸着させるため、染料の定着率がよく均一かつ美しいカラー色を実現させられます。
・絶縁皮膜である
着色アルマイト処理(カラーアルマイト)は絶縁皮膜であることから、電流を流したくない部分への着色処理にも適しています。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)のデメリット

一方、着色アルマイト処理(カラーアルマイト)のデメリットは次の3つです。

色むらが発生することがある
ア着色アルマイト処理(カラーアルマイト)は、豊富なカラーバリエーションが実現させられるのが魅力ですが、材質や加工状態、処理時間、処理温度によっては色むらが発生することがあります。
・色落ちすることがある
熱や太陽光の紫外線の影響によって、色落ちすることがあるため、着色アルマイト処理(カラーアルマイト)そのものの持続性は環境に左右されてしまいます。
・皮膜が比較的もろい
アルマイト処理によって生成される皮膜は比較的もろいため、アルマイト処理後に部材を曲げ加工すると、皮膜が割れたり剥がれたりしてしまいます。従って、曲げ加工を行う場合は処理前にあらかじめ加工するなどの工夫が必要です。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の工程

着色アルマイト加工(処理)の工程

  • 着色アルマイト

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の用途

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の用途はさまざまですが、主に使われているのは、工業分野で半導体製造装置の部品や光学部品などがあります。そのほか商業分野では、医療機器、照明機器、キャンプ用品へ広く採用されています。

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の事例

  • 黒アルマイト
    【事例1】黒アルマイト
    半導体製造装置のプレートに耐食性と黒色の外観性を付与
  • 青アルマイト
    【事例2】青アルマイト
    キャンプ用品に耐食性と青色の外観性を付与

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)で可能な色

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)のJIS(専門用語)

206 染料 437 封孔処理

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)の英語表記

着色アルマイト処理 colored anodized aluminum
アルマイト処理 anodized aluminum
ポア(孔) hole
酸化皮膜 oxide film
染料 dye
セル cell
封孔処理 Sealing treatment
放熱性 heat dissipation
絶縁皮膜 insulating film

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)のまとめ

着色アルマイト処理(カラーアルマイト)は、無色のアルミニウムに豊富なカラーバリエーションを付与することで、さまざまな分野の商材の装飾性や意匠性を高められるのが一番の特徴です。他にも光学部品などの反射防止を目的としたりと、さまざまな分野での活用が期待できる処理になります。

この記事の解説者

代表取締役社長 清水栄次

三和メッキ工業株式会社
代表取締役社長 清水栄次

全国めっき技術コンクールにおいて厚生労働大臣賞、金賞など数多く受賞。めっき業界において始めてIS09001,14001,27001を独自で構築。その中から、めっき特許、並びに独自の技術を商標化。インターネットにて380001以上の取引実績。
めっきセカンドオピニオンによる他社のめっき不良を年間100件解決。

  • 2014年 神戸大学大学院経営学研究科 非常勤講師
  • 2020年 三重大学 非常勤講師

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