リューブライト処理

リューブライト処理は同じ化成処理の1つである黒染メッキ(処理)よりも錆びにくく、亜鉛メッキクロメート処理と同等の耐食性を持っているため鋳物の材質に適しています。また、耐摩耗性に優れ、塗装の下地処理としても使用されています

リューブライト処理とは

リューブライト処理とは、金属表面上に化学酸化剤の反応によって酸化皮膜を生成させる化成処理のひとつで、リン酸マンガン皮膜処理とも呼ばれています。黒色の皮膜でリン酸塩処理として結晶性のリン酸マンガン皮膜を鉄鋼に析出させることで、耐食性、耐摩耗等が向上します。

リューブライト処理の原理

金属をリン酸塩系の処理液へ浸漬し、表面を化学反応させ、金属表面に皮膜を生成させます。

リューブライト処理

リューブライト処理の他の呼び方は?

リューブライト処理は、さまざまな呼び方があり、「リン酸マンガン処理」「パーカー処理」「パーカーリューブライト」「Lb」などがあります。

リューブライト処理の特徴

リューブライト処理の特徴は大きく分けて4つあり「耐食性が高い」「硬度が高い」「破壊電圧が高い」「絶縁皮膜である」という特徴を持っています。

耐食性が高い

防錆油を吸収しやすく保油性に優れているため、黒染メッキ(処理)よりも防錆効果があり、腐食を防止できます。

硬度が高い

モース硬度が5〜6で、ダイヤモンドの半分ほどの硬度があるため、傷がつきにくく耐摩耗性が向上します。

破壊電圧が高い

破壊電圧とは、定められた方法で皮膜に電圧を加えた時に皮膜が破壊される最小の電圧のことをいいます。リューブライト処理をした場合の破壊電圧は、厚膜状態で170〜280V、薄膜状態で140〜220Vとなります。

絶縁皮膜である

厚膜状態で電気抵抗率は12,300Ω/cm2、薄膜状態での電気抵抗率は2,960Ω/cm2、というふうに、リューブライト処理をすることで絶縁皮膜になって電気を通しにくくなります。

リューブライト処理のメリット

リューブライト処理のメリットを解説します。

・耐食性が電気亜鉛メッキの有色クロメート相当と高い
膜厚が厚いため錆びにくく、亜鉛メッキのクロメート処理と同じくらい耐食性に優れ、黒染メッキ(処理)をするより10倍以上、耐食性や防錆力の効果があります。
・摩擦係数を小さく出来るので潤滑性が向上する
回転・摺動する部分の潤滑性が向上し、部品同士のなじみも良くなります。
・かじり防止になり油の使用量を少なくすることが出来る
金属表面に厚い皮膜を生成させ、金属同士の接触や回転・摺動部分のかじり現象を防止するため、かじりの対処に使われる潤滑油の使用量が減ります。
・皮膜表面に凹凸があるので塗装との密着性がよく塗装の下地に適している
皮膜表面に微小な凸凹ができて粒子が荒くなることで、塗装の下地としてアンカー効果を発揮して密着性を向上させます。
・皮膜が剥がれにくい
リューブライト処理でできた皮膜により塗装の密着性が向上して剥がれにくくなるため、塗装の下地処理として利用されています。
・熱的影響を受けにくい
処理温度が100℃以下なので製品の反りなどが発生しません。

リューブライト処理のデメリット

リューブライト処理のデメリットを解説します。

・皮膜均一性がない
膜厚が5〜15µmと厚く、ピンホールなど皮膜の欠陥が多いため、皮膜均一性に欠き、精密さを求める製品には向いていません。
・鉄鋼や鋳物しか処理が出来ない
基本的にリューブライト処理ができるのは、鉄鋼や鋳物だけです。ステンレス、アルミニウム、銅には処理ができません。
・光沢性が必要な外観には適さない
光沢はなく、皮膜自体はだいたい灰色〜灰黒色で、艶消しになります。
・耐熱性が弱い
約250℃付近で変色が始まります。
300℃以上を超えると、皮膜が脆くなり機能が劣化します。

リューブライト処理の工程

リューブライト処理工程表

  • リューブライト処理

リューブライト処理の用途

リューブライト処理は、さまざまな用途で使われています。
具体的な用途としては、自動車部品のピストンやカムシャフト、産業機械やロボット部品、治工具、などがあります。

リューブライト処理の事例

  • 事例
    【事例1】
    自動車部品のピストンに耐摩耗性と耐食性を付与
  • 事例
    【事例2】
    自動車部品に潤滑性を付与
  • 事例
    【事例2】
    治工具のモンキーレンチに耐摩耗性と耐食性を付与

リューブライト処理に関連する「JIS(専門用語)」

5006 クロメート処理 753 耐食性
754 耐摩耗性 2004 酸化剤

リューブライト処理に関連する英語表記

リューブライト処理 luubrite treatment
黒染メッキ(処理) black oxide plating
亜鉛メッキ galvanized
耐食性 Corrosion resistance
耐摩耗性 Wear resistance
リン酸マンガン皮膜処理 Phosphating
リン酸塩処理 Phosphating
破壊電圧 breakdown voltage
モース硬度 Mohs hardness
絶縁皮膜 insulating film
電気抵抗 electrical resistance
潤滑性 lubricity
かじり現象 galling phenomenon
アンカー効果 anchor effect
ピンホール Pinhole

リューブライト処理のまとめ

リューブライト処理は、次のようなケースに利用されています。

  • 鋳物に最適な化成処理を探している場合
  • 耐食性が必要な場合
  • 耐摩耗性が必要な場合
  • 塗装の下地として使用したい場合

本記事で解説したように、リューブライト処理は同じ化成処理の1つである黒染メッキ(処理)よりも耐食性がよく、塗装の下地処理として最適です。また、その性質から、剥がれにくい塗装や防錆効果が必要な自動車部品やさまざまな産業機械などにも活用されています。
鉄系の金属や鋳物に化成処理を行う場合には、リューブライト処理を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の解説者

代表取締役社長 清水栄次

三和メッキ工業株式会社
代表取締役社長 清水栄次

全国めっき技術コンクールにおいて厚生労働大臣賞、金賞など数多く受賞。めっき業界において始めてIS09001,14001,27001を独自で構築。その中から、めっき特許、並びに独自の技術を商標化。インターネットにて380001以上の取引実績。
めっきセカンドオピニオンによる他社のめっき不良を年間100件解決。

  • 2014年 神戸大学大学院経営学研究科 非常勤講師
  • 2020年 三重大学 非常勤講師

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