メッキQ&A


クロムモリブデン鋼上にクロムメッキをした場合、水素脆性の問題は発生するのか?

取扱っている部材や、航空産業用部材場への銅・ニッケル・クロムの
多層メッキについては、専門ではないのでアドバイスすることは
できませんが、水素脆性の問題が生じた場合、どのように対処を
すべきか基本的な事柄については、お話することができます。

金属材料に関する最も重要な性質の一つが延性です。これは、金属が
応力下で変形する能力と定義されます。

水素脆性は金属を脆くし、変形したり伸びるといった延性の能力を妨げます。
メッキ後にベーキングを行うことが、水素を追い出し、金属の内部応力を
緩和する方法です。

合金のタイプ(貴君の場合、4130合金)を知ることは重要ですが、
それと同じくらい、その材料の硬さと「引張り強度」を知ることが重要です。
これらの値は、ベーキングが必要かどうか、またその場合、何℃でどれくらい
の時間のベーキングが必要かを見積るのに必要です。

硬さは、ある熱処理条件で処理された材料に対して、ロックウェル、
ビッカース、ヌープ、ブリネルの硬さ試験により、数値として決定します。

「1平方インチ当り何千ポンド」という引張り強度は、通常、引張り試験機
により、対象とする部材、あるいはその部材と同じ材料か同じ熱処理条件の
ロット、または実際の飛行機の部材から作製した試料をテストすることに
より決定します。
引張り強度は、部材の硬さに直接的に関係します。

その材料のタイプ、硬さ、引張り強度を確認できたなら、メッキの後、水素を
除去し水素脆性の影響を低減するためのベーキングが必要かを決定できます。

経験から言うと、通常、メッキ浴槽から取り出して2時間以内に、
保証書付きのオーブン中に190~204℃の温度範囲で、部材の
熱処理条件や引張り強度を勘案して3~24時間のベーキングを行います。

早見表を利用すると良いでしょう。もし部材の引張り強度が、180,000 PSI
(1240 MPa)より低い、あるいはロックウェル硬さが40HRC(ビッカース硬さHv392相当)
以下なら、メッキ後のベーキングは必要ありません。
以上の情報は鉄鋼材料上への金属メッキに関するものです。
より複雑な銅・ニッケル・クロムの多層メッキ、あるいは装飾用メッキに
関しての影響は考慮されていません。

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