メッキQ&A
摺動部品の場合、引張応力が絶えず負荷されるので、その
引張応力に耐え得るメッキ厚さを確保する必要があります。
確保しないと硬質クロムメッキ特有のクラックが拡大され、
腐食因子である「海水」が容易に母材まで浸透してしまいます。
更に海水に砂を含んでいると、そのエロージョンにより応力
集中部であるクラックの拡大速度は倍増されます。
クロムの表層は空気中又は海水中の酸素と化合して不働態で
マイナス電位をクラック下の素材は酸素の補給がないので
活性態のためプラスの電位を帯びて電気化学的腐食を誘発する
ことになります。
このような腐食は硬質クロムメッキ下の素地に選択的に進行する
ので蟻巣状態腐食を呈し更に素材結晶組織の粒界腐食へと進展する
ことになります。基盤を失った硬質クロムメッキは、膨れたり、
陥没したりして剥離脱落となって現出する結果となります。
効果的なメッキ方法としては次のような方法がよいと思われます。
①出来る限る微細なクラックのメッキ方法とする。
②引張応力が拡散するため指定のメッキ厚さを半分ずつ2度付けする。
ダブルクロムメッキです。
一層目は梨地処理した硬質クロムメッキが妥当です。
③摺動時の引張応力による素材の伸び縮みを抑制するため、150μm以上の
メッキ厚とする。
①~③を併用することも考えられます。